夜に催促される太陽が和らぎ夕日となりつつ、そろそろ静子と花子放課の時間です。木窓に凭れかかり、空を見上げて、子どもたちが水頭の方へ向かってくると感じた母親は素早く、計量カップに水と塩小さじ一杯入れました。

母親たるものは子どもを食べさせる本能はいつまでも変わりません。乳飲み子におっぱいを与え、活発に動き回る幼児にお菓子や飴を与え、そして成長期に入った子どもには笑顔で手料理の豚足の煮込みを提供し、頬張る我が子を見ながら思わず自分も噛み締めます。子どもが独立した後でも、義理の息子や娘にもごま油入り鶏スープ、モツを煮込んだ薬膳スープを作り、これで我が子にも腹いっぱい食べさせることができると思っています。

静子と花子が「腹ペコじゃないか」と心配する母親。まるで黒砂の入った大きな釜に手を入れ鍛錬した鉄砂掌を披露するかのようにご飯釜に手を差し込みます。杉の材木と砂石を担ぐ肉体労働を経験したことから、こうしてご飯を掴み取るのは楽勝で、てきぱきこなせます。左手で掴み、右手に塩水をつけ、両手でぎゅっと握ると、透き通った塩むすびが出来上がります。

男性用ハンカチで包まれた弁当箱を手に提げ、お爺さんはいつものように河原を歩き、防波堤の上に座りました。「爺ちゃん、爺ちゃん」重いカバンで蹌踉めきながら遠くから走ってきた2人の女の子。まるで大きめの靴を履き、ビッグスマイルを顔に描いて、わざと大げさな滑稽な振る舞いをするピエロのようです。走り着く前に、お爺さんは既にハンカチを解き、弁当箱を開いて2人を待っています。

日が沈みかけた夕暮れの河原は昼間より壮大に感じます。普段は口数の少ない祖父と母親手作りのおにぎりを夢中に食べる孫娘たち、河原からは軽い足音だけが聞こえます。「おにぎりは飴よりおいしいだろう」お爺さんは放課後の道の途中でいつも淡々と語りかけます。聞こえたようで、分からないようで2人の孫娘は返事せず、お爺さんもそれを期待しません。その話は笑いを込めて夕日と河原の石に言い聞かせるようなものでした。