時代をかけめぐる馬は柵の前で足を止め、さり気なく足を踏みます。アメリカの鹿は深夜の道路を突然走ってくる車のライトをじっと見つめ、逃げようとしません。同様に、私は日常用品の使い方に対して、思考が鉄パイプのように固く一直線です。しかし、これまで、それが私の知らなかった自分だったのです。
「難しい状況にいてもそのまま受け入れる」それは私が小学校6年生の時、担任の先生からのコメントでした。母親が目の前でハンガーを曲げて使うまで、私はその言葉の意味に気付くことができませんでした。
長女が生まれ、母親が私の家庭生活に関わるようになり、親子の交流が頻繁になりました。じめじめして寒い中、娘の洗濯物がまだ乾いていないのに、新たな洗濯物が出てきました。小さな衣類は大人用のハンガーには合わず、新しく購入した子ども用のハンガーも足りませんでした。そこで、母親はハンガーを両手で握り、少し下に曲げることで問題が解消されました。
24時間営業のコンビニのように、母親は常に頭を働かせ、問題に立ち向かって解決策を見つけようとしています。40年前、トンネル口の傍に住んでいた時、生まれたばかりの弟にお粥を食べさせたかったのですが、電子鍋も炊飯器もなく、しかし、火鉢で少しだけのお粥を作ることも、機転の利く母親には絶対許されませんでした。そこで、魔法瓶にお米を2匙程度入れ、「ずっと火加減を気にせずにできる」と喜んで言いました。そして、「昔のサーマルクッカー」とも言っていました。
初めて母親がくれた干し大根を見た時、私は一瞬驚きました。なんと、それは薬酒の五加皮酒の黄色い瓶に入れられており、しかも狭い口から取り出すための先端の曲がった細長い棒までつけてくれました。
市販の茶色い干し大根と比べて、母親の作った干し大根は美しい黄色をしています。母親は、酒瓶を使って干し大根を作るアイデアの発祥地が宜蘭だと言っていました。その狭い口は、「風味を逃がさずに」酸化を抑えられるため、鮮やかな黄色と豊な旨味が保たれるのだそうです。
しかし、宜蘭人は干し大根の取り出し方については手軽さまで考えていませんでした。母親は使い勝手の悪いものを敵と見なし、そのまま受け入れることはせず、取り出しにくいものは暴政のようなものと見なし、覆すべきだと考えました。最初は太い針金で鉤を作りましたが、塩に触れると錆びてしまいました。そこで、代替案を考える中で、ある日アルバイト先で使われていたステンレスの溶接棒に注目し、それを持ち帰って道具を自作しました。