テレビでセンザンコウが蟻を吸い取って食べる異様な様子の映像では、その背景には主にアフリカ大陸のサバンナが映っています。実は、センザンコウは台湾の固有種であり、古くから台湾に生息しています。

お爺さんはセンザンコウをよく食べていたと母親が語ってくれました。お爺さんたちは、このような、鎧のようなウロコに覆われた動物を「センザンコウ」とは呼ばずに、「ラリ」と呼んでいました。この「ラリ」という言葉は、最初はホーロー語(台湾語の別名)のように思われましたが、実はその語源は日本語の「鯪鯉(リョウリ)」に由来し、それが訛って「ラリ」と発音されるようになったのです。さらに、ラジオ、看板、パン、オートバイなど、他にも日本語が台湾語に取り込まれた例がいくつかあります。

母親がお嫁にきてから、対岸の松羅の原住民がセンザンコウを手に持ち、仲間のお爺さんと一緒に賞味しにやってきたのを目撃したことがあります。数人がしゃがんで輪になり、息絶えたセンザンコウの甲羅を剥がしました。ウロコが剥がされていくセンザンコウの様子は、まるで戦国時代の武将である廉頗が自分が年老いて戦場に赴けない物悲しさを感じるかのようでした。

また、聡金仔小父さんと3番目の叔父さんが仕事帰りに、2人は一言も言葉を交わさずに線路沿いの道を歩いて帰宅する日の出来事です。辺りが暗くなり始め、突然、山の斜面から玉のようなものが転がり落ちてきました。薄明りを頼りに前を歩いていた聡金仔小父さんが近づいてよく見ると、それはセンザンコウでした。

2人は獲物が自らやってきた喜びに胸を躍らせました。「阿金、阿金、センザンコウを食べない?」と聡金仔小父さんが夕食の時間にお父さんを誘いにきました。お父さんはただ笑顔で首を横に振りました。すると、母親は、「阿金はセンザンコウなんて無理だからね」とまるで無声映画のナレーションのように説明を加えました。「じゃあ、俺たちで食べちゃうよ」と聡金仔小父さんはお父さんがセンザンコウを食べない理由を理解しているかのように笑って、自宅に戻って珍しい味を楽しみました。

野獣を食べられないお父さんは災難を免れることができました。2人は夜中に相次いで下痢、嘔吐をし、冷や汗をかき、苦しい思いをしました。

後で、母親は「人々の話を全く聞かないからだ」と嘆きました。夜、郊外で突然落ちてきたものは拾って食べてはいけないという考えは、大平山の住人たちが昔から信じています。空から急に落ちてきた鳥や昆虫、野獣は土地神や山神、木の神様の化身であり、捕まえたり拾ったりすると神様を冒涜することになり、必ず神罰が下ると信じられているからです。また、昼間中、造物主は人類に十分な食べ物を与えてくださると山の住人たちは信じていますので、野生動物を狩猟して捕まえ、食べても病気にはならないと考えています。