原木を運ぶ黒い列車がブーという音を鳴らしながら、水頭の家の前を走ってきました。まるで長い胴体を持つ黒いダックスフントのような列車に、喜んだ猟犬のクロが階段を駆け下り、しっぽを振りまくりました。

母親はその光景を目にし、「列車が通過しても吠えない猟犬、初めて見たわ」と首を横に振りました。閑静な山の中で、猟犬は人影を見ると喜んでしっぽを振りますが、大声で吠えて飼い主に警戒の合図を送るのを忘れてしまったでしょうね、と彼女は言いました。

ある日、3番目の叔父さんが刑事の友人に「兄がきれいな猟犬を飼っている」と話しました。その刑事さんは「クロ」が訓練されていない猟犬であることを聞き付け、翌日、その猟犬と交換で1匹の台湾犬を連れてきました。

「全身の毛も目も黄色で本当にきれいです」母親は目を大きく見開き、その台湾犬のインダのことを振り返りました。2本の前足を高く上げ、人間に寄り掛かってくるのが好きなので、母親はその動きを表すホーロー語(台湾語の別名)のインダと名付けました。

春風に誘われ、精力旺盛のインダはじっとしていられず、遊びに出かけました。夜になっても戻ってこず、母親は家の門の前で「インダ、ご飯だよ!」と叫んでも、返ってきたのは風と水の音しかなかったので、インダが家出をしたのは確実だと分かりました。

翌日の朝、母親は長い竹竿を立て、先端に父親のスニーカーをかけました。女の子に誘惑されたインダの魂を呼び戻すためだと母親は言いました。毎日、朝、昼、晩、食事の前に「インダ、ご飯だよ」とインダを呼び戻していました。

このように諦めずに呼び戻し、7日後にインダが戻ってきました。「インダは完膚なきまで叩きのめされたでしょうね」と母親は苦笑いをしました。インダは全身に噛まれた傷跡が残され、黄色い毛に色黒っぽく乾いた血痕が所々付いています。インダが春を迎え、放浪の旅をした証でした。

山の下にある天送埤の村に引っ越した際に、順泰と弟の2人はそれぞれ猫と犬を抱えていきました。犬は飼い主のことを忘れないというので、引っ越し先に着いたらインダはワクワク走り回りました。一方、猫は飼い主よりも住む家のことをずっと忘れないというので、新居の前では後退りしました。新居に引っ越して、仲間の猫がいなくなったインダは古井戸のロープに縛られずに依然元気よく吠えまくりました。

騒音が環境問題として取り締まる対象になっていないあの時代に、近所の人はすでに抗議に乗り出した結果、インダは離れるしかありませんでした。そこで、父親はインダを水頭に連れ戻し、猫と蝶の傍にいさせました。インダの響き渡るような吠え声が花草の間から聞こえてきて、ますます倉庫を見張ることがインダに相応しいと思えるようになりました。

とことが、ある闇夜の翌日に悲惨な出来事が起きました。力強く吠えまくるインダの吠え声が消え、代わりに悲鳴のような呻き声が聞こえてきました。誰かがインダの声帯を除去したのです。「インダは毒を盛られて吠えなくなりました」と母親は首を横に振りながら嘆きました。

あっという間に3、40年が過ぎました。近年、三星と天送埤地域では、インダとによく似た全身の毛と目が黄色い台湾犬2匹を見かけたのは鹿の養殖所と崙背あたりだけでした。母親は遠方の山々を見つめながらこのように振り返った後に「インダの子孫に違いないでしょう」とも語りました。母親にとって、インダの毛色と目の色は格別できれいな黄色でした。