5年前、天送埤の福山寺の門前に立派な牌坊(鳥居に似たような建築物)が建造され、工事完了後に父親は捨てられた木製型枠を拾い、それを薪として使おうとしました。プロパンがスと湯沸器が一般家庭に普及した折、父親は現代文明よりも薪でお風呂を沸かす方がずっと気に入っているようです。

毎日、父親はかまどの前でしゃがんで薪でお風呂を沸かすことに甘んじります。それはものを大切にする倹約家の母親の性格には調和するものであるかのように思われましたが、運命は時折、この2人の調和を攪乱します。

雨の夜、仕事上がりの母親は合羽と長靴を履いたまま、急いで帰宅しました。キャベツ畑で丸一日施肥作業に従事したため、全身に汚れと鶏ふんの悪臭が付いています。一刻も早くきれいにしようと慌てて裏庭を通り抜け、屋内に入ろうとした時に、うっかりして父親が拾ってきた木製型枠に足が引っ掛かり、蹴ってしまいました。その瞬間、キャーという悲惨な叫び声が聞こえました。同時に、一枚の型枠が彼女の右足の甲に倒れ、その上の錆びた釘一本がゴム製の長靴から貫通して、足の甲を通り抜けて靴の底面まで突き刺しました。

型枠をきれいに積み上げなかった父親の手際の悪さに母親が不満を漏らし、また、釘が付いている方は内側に向けさせるべきだとも文句を言いました。釘が彼女の足だけでなく、心にも刺してしまいました。それよりも、目前に大事なのは、釘に刺された足の怪我の処置です。

歯を食いしばって、母親は型枠を釘ごとに抜きました。破傷風の恐ろしさは母親は知っていますが、病院に行って注射をしてもらいませんでした。それは、怪我した足の部分を叩き、足を振ることで悪い血を外に出したからと言いました。

それでも母親は痛くて堪えられません。翌日、足を引きずりながら出かけました。最初に出会った人から「シロウリをみじん切りして被覆材として傷口に当ててみて」と勧められました。2人目に出会った世話好きの隣人からは「シイタケで尿に漬け、それを傷口に当てたら」と提案されました。勘弁してもらいたい母親は「どこでシイタケをつけられるほどたくさんの尿が見つけられるのよ」と呟きました。

そこで母親は薬局に入りました。女主人は薬局なのに、薬を売り歩く行商人のような口ぶりで母親に話しました。「その時に最高の薬はなんでしょうか?橄欖(カンラン)の甘草漬けです!」

母親は見物人のように呼応してこう聞きました。「どこが最高でしょうか?」

「型枠を作る1人の労働者が釘に刺され、博愛病院に1か月も入院したものの、完治できずに、うちの店に薬を買いに来ました、、、、、、」話が長くなりますが、とにかく、甘草汁に漬けた橄欖(カンラン)は錆びた釘に刺された傷口の治療効果は抜群だということです。

母親は薬局を後にして、橄欖の甘草漬けを買いに大輝仔の雑貨屋さんへ向かいました。秀琴叔母さんの雑貨屋さんと大輝仔のは道を挟んで向かい側にあるのに、妹のお店で買い物をしなかったのは足が痛すぎて、「道を渡るのも億劫です」と母親は言いました。

薬局の女主人の言う通り、甘草漬けした橄欖を口の中で噛んでから傷口に当て、熱く感じたらその橄欖を捨て、また新たに橄欖をかんで傷口に当てます。努力した甲斐があって、繰り返しているうちに傷が治り、傷跡は何1つ残っていませんでした。