順泰はここ最近、連日靴磨きに行っています。路上の片隅に座り、入念に靴を磨いていくれる年配のベテラン職人の姿を眺めるのが気持ちいいです。靴は新品のように変身し「苦労を重ねた老人のシワシワの手はまるで神業」順泰はお爺さんのことを思い出します。

子どもの頃、動きが活発な順泰はよくトラブルに遭遇し、頻繁に手を傷めました。ひどい時は、肘の脱臼、腕の骨折、腕骨の破裂に遭い、左手の指1本が今も曲がったままになっています。怪我した時、順泰専属の推拿医師お爺さんは片方の手で順泰の手のひらの縁を軽く掴み上げ、もう片方の手は繰り返し親指で推し進めます。楽そうに見えるが、繊細な力加減が必要です。推し進めるうちに、渋くなったら、お爺さんは親指に唾を付けてまた推し進めます。サロメチールやタイガーバームよりもお爺さんの唾の方がよく効き、順泰にとってお爺さんはまさに国手。お爺さんの推拿は最高に満足です。

出身地桃園を離れて久しく、故郷との唯一の繋がりが木工のお爺さん。口にする福佬語(ホーロー語)はすでに宜蘭特有の訛りが入るようになっています。例えば唇を平たくして発音するhn̂g(園)、 ńg(私、私たち)、n̂g(黄色い)、sng(酸っぱい)の言葉は宜蘭訛りだと口笛を吹くような形で、huînn、uínn、uînn、suinnと発音します。桃園・大渓の名物の干し豆腐を作るのは門外漢だが、竹細工や木工が得意なお爺さんはいったい、いつ、誰から教わったか、父親も母親も知らず、もしかすると、大渓出身だったからかもしれません。大渓は木工が有名で、特に神棚は評判が高いです。

母親が言うには、家で使う物は大きな食卓と箪笥を除き、醤油の醸造に使う大きな木桶、風呂桶、豚の餌用の残飯を入れる木桶、、、ほとんどの木製品はお爺さんの手によるものです。

更には、鞘の部分は竹釘で木の板2枚を固定してできた鞘付き木刀。アルミの空き缶の下に車輪を付け、長竿で推し進めると車輪が回り、からんからんと音を出して遊ぶもの。これら順泰の玩具もお爺さんが作りました。

家族みんなは記憶の中で、お爺さんは常に何かの修理や新作をしており、木を削ったり、カンナで木の表面を滑らかにしたり、磨いたりします。木工はお爺さんの晩年の趣味でした。

お爺さんが下を向いて両手は木や木工道具を触っているうちに、鼻水が2匹のヘビがゆっくりと穴から這い出るかのように垂れ下がり、赤く厚い唇に到達したとたん、脳の中枢がアラームを出し、2匹のヘビが瞬時に巣に戻っていきます。ひたすら集中しているからでしょうか。木工する間、お爺さんは鼻をかまず、木屑が落ちた音と急な鼻のすすり音が静かな庭沿いの廊下で交互に繰り返し、こうして、お爺さんと順泰の午後の時間が流れていきます。