水頭という地域では、眠れぬ夜が多く、その原因はほとんどの場合、ヘビです。

ある晩、上の姉、静子は微かな灯りに導かれ、部屋の隅で小便桶で用を足そうとしました。しかし、足元には1匹の台湾ハブが小便桶に巻き付いているのが目に入り、驚愕の表情を浮かべました。静子の目は大きく見開き、口をぽかんと開き、恐怖によって声が詰まってしまいました。結局、静子はトイレに行くこともせず、パンツを半下ろしのまま、忍び足で援軍を呼ぶために進んでいくのでした。

また別のざわつく夜に、耳聡い母親はパタパタという不審な音が聞こえました。ヘビや山猫かもしれませんが、母親はその正体を考える勇気すらなく、通常、最もありそうなのは僅かな隙間も難なく通り抜けるヘビでしょう。

世間の母親は元々恐怖心を抱きやすい傾向があるものの、子どもの安全に関わると咄嗟に勇気が湧き起こります。普段は「ヘビと聞くと、身の毛がよだつ」という母親も、この度はゴム長靴を履き、お爺さんが手作りしたヘビ退治の武器を手に取り、戦う覚悟をしました。それは鍬くらいの長さのバットで、先端に3本の金属製の爪が取り付けられているものです。準備万端の母親は夜のヘビ退治作戦を開始しました。

部屋の中で、音の発生源を探るために母親は自分の影に随伴して動き出しました。居間に近づくと、パタパタと断続的に音が聞こえ、その音は神棚の下から発せられていることを突き止めました。蝋燭を近づけると、ヘビらしきものは何もなく、結婚式の引菓子の金属の箱が神棚の下の物置に置かれているだけでした。

不審なものは一体どうやって入ってきたか、母親もさっぱり分からず、慎重に遠巻きに進み、先端に金属の爪が付いた棒で僅かに開いている蓋の部分を開くと、微かに青く光っている蝶が飛び出しました。思わず「あっ」と声を出し、安堵の胸を撫で下ろすように大きく息をつきました。ヘビよりも蝶は可愛かったのです。

母親は日頃、子どもたちから頻繁に難問や厄介な問題をぶつけられることにはすっかり慣れていますが、蝶を捕まえて何をするつもりなのか、聞いてみない分かりませんね。